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「お父さん! 気がついたの!?」
うっすらと目を開けると、記憶よりも年を重ねた娘が見えた。
それを口にすると、「お父さん、私がわかるの」と泣かれてしまった。
やれやれ。
どうやら私は、長い間ぼけてしまっていたらしい。
おっといけない。
時間が無いのだ。
「由紀・・・・・・頼みがある」
「なあに」
「私が亡くなっても・・・・・・母さんの墓に百合の花を毎年持っていってくれないか・・・・・・。母さんとの、約束なんだよ・・・・・・」
そう。百合の花が好きな彼女に、毎年花を贈ると約束して結婚した。
私がいなくなっても、花を捧げたい。
いつも笑顔で私を送り出してくれた彼女に。
突然倒れて、そのまま還らぬ人になった彼女に。
ああ、君にまた会える。
目を閉じる。
再び、暖かな暗闇が私を包んだ。
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