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はぁー
それから角田さんは笑顔から一変、わざとらしい大きなため息をついて突然力を抜いたかと思うと、そのまま椅子の背もたれにゆっくりと体重を預けた。
「だったらもっとシャキッとしなさい!」
「……はい?」
キュッと集まった眉間のシワと予想外の言葉に首をかしげる。
「触れないからって何もビクビクしなくていいじゃない。せっかくお肌も綺麗なんだし、よく見ると目も二重で大きいし、十分自信持っていいはずよ」
一人でうんうんとうなづく角田さんを呆然と見つめて、それから助けを求めるように視線を彷徨わせた。そんな風に容姿について褒められたことはなかったから、どういう反応をしていいのか少しパニックになってしまう。
もう休憩時間も終わる頃だろうか、人がちらほらと戻り始めている。
「ほら、そうやってキョロキョロするのもよくないわよ!いい?あなたはもっと堂々と生きなきゃダメ」
触れない程度にずいと近寄る角田さん。もうお互いに距離感を掴んだのか、私も後ずさりするようなことはない。
どうして、私のことなのに。私が解決しなきゃいけないことなのに。こんなに私のことを考えてくれるんだろう。
彼女の言葉が、今まで壁を作っていた心にダイレクトに伝わる。
もっと角田さんと話をしたい。先ほどそう思ったことと相まって、私は目元がじんわりと温かくなるのを感じた。
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