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「なんだか妬けちゃいますね」
「あら、それはこっちのセリフよ。最近満君とやり取りしてるんでしょう?紹介したのは私なのに、かおちゃん何も教えてくれないんだから」
「角田さんのお話することが多いから、言えなかったんですよ」
普段はあまり飲まないお酒を飲んだせいか、ずいぶん酔いが回ってきた。
クラクラする頭で話の内容を思い出して、ふふっと笑いがこぼれる。
「何、そんな笑うような話してるわけ?」
教えなさいよと笑いながら私の体を小突くふりをする角田さんに、ついある疑問が浮かぶ。
「……角田さんは、田端さんと……付き合ってるの?」
自分では心の中で聞いていたつもりでいたから、驚いた顔をする角田さんに逆に私が驚いた。
声に、出てた……?
しばらくすると、驚きから覚めた角田さんが今度は声を上げて笑った。
「あらやだ、仲良くなってから随分経つのにわからないの?」
焦りで鼓動が早まる私には、どうして角田さんが笑っているのかわからない。
そんな私に、内緒よと言って角田さんは耳元に顔を寄せた。
「私が好きなのは……社長よ」
語尾にハートマークでもつきそうな調子でそう囁かれる。
数秒動くことができなかった私は、お酒を煽って無理やり頭を働かせようとする。
そして一緒に挨拶回りをしていた頃の社長を思い出し……それから角田さんの方に向かい合う。
薄く頬を染めた角田さんを見て、なぜか少し力が抜けた。
瞬間脳裏に浮かんだ田端さんの顔に、胸が静かに震えるのを感じた。
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