第五歩 煌めく

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「お待たせしました……」  青く晴れた空に、優しい初夏の風。  休日は家にこもってばかりの私ですらちょっとお散歩でもしようかと思うくらいの、絶好のお出かけ日和。  そんな中で私は、陽気な日差しにはとうてい似合わない小さな溜息をついた。  電車に乗ってどこに向かうのだろうか、駅前ではせわしなく人が行き来している。おどおどした足取りで人ごみをかき分ける中、静かに佇む七分袖のジャケットを着た青年はすぐに見つかった。 「お久しぶりです。俺も今来たところですよ」  ニコニコと笑う青年は、美容師の田端さんだ。  以前美容室を訪れた時も白いワイシャツ姿が眩しかったが、今日の服装は仕事着とは違って若さがにじみ出たカジュアルな感じで、田端さんの爽やかさをよく引き出している。  と、ある意味一種の現実逃避じみたことをしている私だが、ぎこちなくとも笑顔を返すことを忘れない。何より田端さんには多大なる迷惑をかけているのだ。タイミングを見て全力で謝罪をしなくては…… 「あの、田端さん」 「違います……あぁ、伝えてませんでしたね。このあいだの質問、答えはイエスです」  笑顔を崩さないままの姿勢で、ずいと顔を近づけられる。  はて、この間の質問とは一体なんだろう。  急に接近した距離にもはや何も考えることはできないが、先日我に帰った後必死に謝罪のメッセージを送った時の反応を見る限り、田端さんは結構頑固な性格のようだった。  酔っていたのでといくら言っても、土曜日楽しみにしていますとしか返事が返ってこなかったのだ。
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