第六歩 蝕む

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「待って!……待ってください」  後ずさる私に被せるように満君が一歩近づく。 「お願いです、まだ行かないでください」  あぁ、どうしてこのまま走り去ってしまわなかったんだろう。  顔を見なくてもわかる、悲痛な声。  まだ明るい空の下、そんな言葉を掛けられて走り出せるわけがなかった。  私の両方の目からは、すでに大量の涙が溢れている。 「大丈夫だなんて言いません。ただ、少しでも……僕のことを信じてもらえると嬉しいです」  また一歩、距離が縮まる。  逆光で見えなかった満君の顔が、よく見えるようになった。  信じる?満君を、信じる?  私は信じていた。信じて、信頼して満君を__ 「……あ、れ?」  信じるって、なんだっけ。  信頼って、信じて、頼ること?頼れると思って、その人を信じること?  それなら私は……一方的に期待して、何も自分からは歩み寄ろうとしなかった。 「あ、あぁ……」  改めて気づかされた事実に、止まることのない涙とともに嗚咽が漏れる。  そんな私を見る満君は、困ったように眉を下げて、それでも必死に笑おうと口元を緩めていた。
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