第六歩 蝕む

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 私には三つ年の離れた姉がいた。  いつも笑顔を絶やさない優しい姉は、私の自慢だった。  お姉ちゃん、お姉ちゃんとちょこちょこ後をついて回って、よく母親を困らせたものだ。  姉との思い出は、すべてが柔らかく、温かいものだった。  ……ただ、幼い私にはわからないことが多かった。 「ねぇ、お姉ちゃん。どうしてお姉ちゃんはお家に帰ってこないの?」  幼稚園生だった私は、いつものように真っ白い部屋の真っ白いベットの横に座って、姉にそう問いかけた。 「うん?かおちゃんはお姉ちゃんがお家にいないと寂しい?」  背凭れに体を預けて微笑む姉に、寂しくないと首を振る。 「ううん。もう4歳になるから一人でも寝れるし大丈夫!だけどね、お姉ちゃんは寂しくないの?」 「……かおちゃんは優しいね。お姉ちゃんは、こうやってかおちゃんが来てくれるから、寂しくないよ」  本来だったら小学二年生として学校に通う年頃の姉は、入院というものをしているようだった。  両親にそう聞かされ、幼いながらも姉が普通のお姉ちゃんとは少し違う環境にいることを理解していた。 「そうだ、来週はかおちゃんのお誕生日だね」 「うん!お誕生日!」  家からほど近い小さな病院で、母親が迎えに来るまで毎日たくさんの他愛のない話をした。  
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