第六歩 蝕む

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「お姉ちゃん?」  病室内に足を踏み入れると、両親が私の声に振り返った。 「香音、ごめんね帰れなくて」 「お姉ちゃんなんで寝てるの?」  ベットの側まで近寄ると、姉の腕からチューブが伸びているのが見える。 「お姉ちゃんちょっと具合が悪くなっちゃてね、お薬で眠ってるのよ」  そう言う母に促されて、椅子に座る。よく見えるようになった姉は、穏やかな寝息を立ててすやすやと眠っていた。 「いつ起きるの?」 「あと数時間で起きるみたいだ、心配しなくて大丈夫」  父は安心させるように私の頭を撫でた。 「それと香音ちゃん、お姉ちゃん今日おうち帰れなくなっちゃったんだ」  ごめんねと謝って看護師に呼ばれて病室を出て行った両親を、私は呆然と見送ることしかできなかった。
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