第六歩 蝕む

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「お姉ちゃんなんか大嫌い!」  目が覚めた姉に私が放ったのは、そんな最低な言葉だった。  うつろだった視線を固まらせて目を見開く姉に気付かずに、私は大声を上げ続ける。 「今日は私の誕生日なのに!帰ってくるって言ったのに!お父さんとお母さんもいつもお姉ちゃんばっかり!」  自分でそう言いながら、ぽろぽろと涙を流す。 「……っ!」  後から思えば姉は起きたばかりで声が出せなかったのかもしれなかったが、その時の私にはそんな考えは浮かばなかった。  やはりみんな私のことなんか好きじゃないんだという感情で支配された心は、私に病室から走り出す以外の選択肢を用意してはくれなかったのだ。  夏休みも、冬休みも姉の病室に通った。友達の家に遊びには行ったけれど、旅行なんて一度もしたことがなかった。  一度想いが溢れてからは、それもこれも全部姉のせいだと、苦しい胸を抱えて無我夢中で走る。  そうして病院の中庭で縮こまって一人静かに泣いていた時、不意に背後でどさりと重い物が落ちる音がした。
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