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「あの時の熱が消えないんです。人に触れるとじわじわよみがえってきて、責められているようで……怖いんです」
あの時から体を蝕む熱は、姉の病が治って、私が一人暮らしを始めた今でも消えることがない。
暗くなった川沿いのベンチで、隣に座る満君に誰にも話したことのなかった私が”触れられない”理由を聞いてもらった。
「だから、私が言いたいのは……満君が私のことで傷つく道理はないってことで……そもそもそんな風に気にかけてもらっていいような人間じゃないんです、私は」
さぞ、絶望に満ちた顔をしていることだろう。
情けない、最低な人間だと思われても仕方ない。
だから、だからこそもう満君と関わるのはやめよう。
そう思い横を向いた私は、ぎょっとした。
泣いていたのだ。
満君が、静かに頬を涙で濡らしていたのだ。
「……っ、満君?」
初めて至近距離で見る男の人の泣き顔に、私はどうしたらいいのかわからずに戸惑いの声を上げた。
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