Misery

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 信号機に側方から衝突したのか、黒いスポーツカーの助手席部のドアが90度、くの字に曲がっている。  それどころか車体そのものが信号機を中心に折れ曲がり、モノコックボディは原形を留めていない。  肉片のこびり付く血塗れた運転席のシートごとドライバーの遺体が、フロントガラスをまるで障子のように簡単に破いて車外に飛び出していた。      ドライバーの心情を具現化した様に、黒いスポーツカーのヘッドライトの隙間から涙の如く、黒いオイルの滴が下方に伸びる。  ーーー・・・・・・事故現場の空間が淡い色に染まる視界。    聴こえてくるのは、幼い少女が泣き叫ぶ残響。  脳に響くサイレンの音が鼓膜をつん裂く程、耳に痛々しく刻む。            
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