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自販機に目をやると、その明かりを遮る影が見えた。傘をさした女性が自販機に寄りかかっていた。頬の筋肉が、無意識に強張るのを感じる。長内さん以外の人間と言葉を交わす事無く、俺はこの三年間を生きてきた。人と関わるなんて面倒だ。いや、怖い。血の気が引くほどの恐怖を感じる。引き返そうか。でも、それは癪だ。でも……。自販機をチラ見しながら、彼女の前をぎこちなく右往左往。気づけよ。それが本音。
ようやく彼女が顔をあげて、ピンクと白のギンガムチェックの折り畳み傘の下から、うかがうようにしてこちらを見る。彼女のその思いがけないほどのあどけなさに、俺は少したじろいだ。高校生くらいだろうか。何やってんだ、こんな時間に。
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