CRY LOUDY

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そうこうしているうちに俺のつま先がどんどん雨を吸って、冷たくなってゆく。もう待っていられない。俺は意を決して無言で自販機に近づいた。スカートから伸びる彼女の足は素足で、ストッキングとか、そういう物は身に着けていなかった。こっちが震えてしまいそうなほど寒々しいいで立ちが、彼女の切迫感を物語っているようだ。そこで俺はようやく、彼女が自販機に寄りかかっていて離れなかった理由を悟った。彼女は自販機の放つ熱で暖を取っていたのだ。 「『巨漢の星』さん……ですか?」 「……え?」 俺を見る彼女の声はか細くて、少し震えていた。折れた傘の骨の先から、しずくが滴って柄を握る彼女のこぶしにあたってはじけた。雨で湿った彼女の手は、きっと凍るほど冷たいのだろう。
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