1人が本棚に入れています
本棚に追加
さっさと帰ろう。彼女の背中で隠れていたボタンを押してお目当てのジュースを手にした俺が踵を返そうとすると、彼女が突然俺の腕を掴んで引き寄せてこう言った。
「早く!帰ろう!」
戸惑ってもたついている俺の腕を強く引っ張りながら、彼女は必死に走り出した。首をひねっている巨漢を置き去りにして。
「ちょっと……おい!」
彼女は夢中で走り続けるので、俺は自分のマンションの前を通り過ぎ、そのままつられて走るしかなかった。彼女の傘が激しく左右に揺れている。訳も分からないまま、二月の冷たい雨の中を夢中で足り抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!