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CRY LOUDY
真夜中の二時過ぎ。濡れたアスファルトとタイヤのこすれる音だけが聞こえる。人の話し声は皆無の闇。
七階まで迎えに来たエレベーターに乗り込み、オートロックのドアを抜ける。オフホワイトのパーカーのフードに顔を隠した俺は、息をひそめるように小雨の中を歩く。二月の雨は突き刺さるほど冷たい。
中学受験をして、都内にあるそこそこの中高一貫の男子校に進学したものの結局馴染めず、二学期になる前に不登校。そのまま、俗に言う引きこもりになった。母が懇願するので仕方なく大検を取って、一応希望した大学に合格はしたが、入学式から一週間ほど行ったきり、もう三年間もそのまま放置している。そう。俺がここまで堕落したのも、結局、金が原因だ。
元々は、ここのマンションの最上階で祖父母と母と俺の四人で暮らしていた。祖母は俺が幼いころに亡くなってしまったので、彼女の記憶は何もない。あるのはやたらと権威を振りかざす鬱陶しい祖父と、もはや諦めて取り合わない母の記憶。身体が小さく風邪ばっかり引いている俺を一瞥して舌打ちをする、そんな祖父だった。祖父が強く反対した相手との間に出来た非嫡出子だった俺を、祖父は忌み嫌っていたのだ。
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