第9章

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「その珠が私の眼となり耳となり鼻となる。私はその珠でものを感じる。そのために限りある珠を受け入れられる者たちに与えたのだよ。そしてこの辺鄙な山奥に引き篭もり時を待った。黒田は雑務をこなしてくれたんだが、やつの役割も終えた。北村も私のメッセージを伝える役割を終えた。塩見や田宮もそれぞれの役割を終えたのだよ」 明らかに僕に話していないのがわかった。マニルが必死に何かを堪えているのが感じられた。何故かはわからなかったが、すぐ近くにいるマニルから恐怖、怒り、憎悪、とありとあらゆる感情が溢れそうになっているのを抑え込んでいるのが手に取るようにわかった。 「それぞれの役割。君の役割はとても重要だ。誰も君を傷つけることは許されない。君を傷つけようよする者から君を守るのも、その珠の役割だ。だから君には呪文は効かない。ほんの少しでも術がかけられたというのは、その術者が優れている証でもあるがね」 「あの………さっきから、なにを言ってるのか、サッパリわからないんですが………」 マニルの怒りや感情が驚くほど感じられなくなり、その眼には再び冷たい光が戻っていた。 「秋介君。君にはなにから説明したらいいかね。それとも余計な説明はなしに、君の役割を果たしたてもらったほうがいいかね」 嫌な予感しかしなかった。神山や輝ニおじさんの死も実はドッキリで、ひと段落したらドアの向こうから2人して元気に現れるんじゃないかと思っていた自分に自信がなくなっていた。
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