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「ここがどこかわかっていないのか…? もともとは内田兄弟が隠れていた村だ。かつて、その内田兄弟を慕って多くの活動家がやってきた。その中にはお前の師でもある、松本重明もいた…」
「なるほど…」
「貧乏臭せぇ村だと思ってるだろ…。ここにはかつての活動家の血縁がゴロゴロいる。そして、どうゆう訳だが知らねえが、お国からも色んな支援があるんだよ…」
マニルは眉1つ動かさずに、男の動きと気配に注意を払った。
「で…それと、私がお婆さんに会えない理由はあるのかね?」
「ああ…婆さんが会いたくないって言ってるんでね。それだけで十分な理由だろ」
「なるほど…確かに夜遅く女性に会いたくないと言われたら、無理に会うのは失礼だな…」
男は再び笑みを見せた。
「クソが…」
マニルは静かに一歩下がると、栗原酒店の端にある古い石造りの蔵に視線を向けた。
「で…あそこに隠れているのは北村さんか?」
男の表情に初めて驚きと焦りが見えた。
「お前の鼻は動物なみか…」
男が再び暗闇に身体を移動させると、そのまま静かに気配が消えて行った。そして山から聞こえる動物の鳴き声や蟲の音がマニルを包み込むと、月がゆっくりと雲に隠れていった。
唯一の月明かりが失われ視界を完全に失うと、暗闇のなかでなにかが蠢く気配を感じた。
「ほお…こいつは懐かしい臭いだ…」
暗闇の中で蠢く気配は、かつて重明が度々実験で失敗したときに産みだされる、人の姿を奪われ化け物のような姿の人間たちの気配だった。マニルは重明の指示で何度も彼らの処理をさせられ、数えきれないほどの失敗作を潰し焼却してきた。
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