1 : きっかけ

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それでも男は納得がいかないらしく、 往生際悪く食い下がる。 「し、しかし、事実、そなたには我の姿が…!」 「えぇ、それはもう、僕の最大のミスだと思っています。」 「ミス…?」 「本来ならば僕も、アナタを見て見ぬフリでそっとしておくべきでした。 しかし、僕の性分上、衝突しそうになった人に声も掛けず、そのまま去るというのは…。 あそこまで派手に転んで、咄嗟の事でもありましたし。」 「…否、それはミスではないと思、」 「ですから、そもそもから間違っていたのです。 僕がアナタと会ってしまった事から。」 「だからだな、それは、」 「そういう事ですので、さようなら。 僕にはもう、アナタは見えません」 「我は、」 「夢を壊すような真似をして申し訳ないです。 ですが、これを機に…という訳ではありませんが、現実を見据えて生きていく事も重要だと、僕は思います。」 少年は矢継ぎ早に言葉を紡ぎ、男の反論をも遮って、再度家路に就こうとする。 …のを、またしても男は止める。 否、"止めようとした"。
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