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それでも男は納得がいかないらしく、
往生際悪く食い下がる。
「し、しかし、事実、そなたには我の姿が…!」
「えぇ、それはもう、僕の最大のミスだと思っています。」
「ミス…?」
「本来ならば僕も、アナタを見て見ぬフリでそっとしておくべきでした。
しかし、僕の性分上、衝突しそうになった人に声も掛けず、そのまま去るというのは…。
あそこまで派手に転んで、咄嗟の事でもありましたし。」
「…否、それはミスではないと思、」
「ですから、そもそもから間違っていたのです。
僕がアナタと会ってしまった事から。」
「だからだな、それは、」
「そういう事ですので、さようなら。
僕にはもう、アナタは見えません」
「我は、」
「夢を壊すような真似をして申し訳ないです。
ですが、これを機に…という訳ではありませんが、現実を見据えて生きていく事も重要だと、僕は思います。」
少年は矢継ぎ早に言葉を紡ぎ、男の反論をも遮って、再度家路に就こうとする。
…のを、またしても男は止める。
否、"止めようとした"。
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