1 : きっかけ

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そろそろ寒さに我慢が出来なくなってきたらしい。 触らぬ神に祟りなし、とばかりに帰ろうとする少年を、男はなおも引き留める。 「あの、帰りたいんですけど。」 「だからだな、我が視える理由を説明してから…」 「質問の意味が理解できかねます。 それではさようなら。」 「か・え・る・な!!」 少年は立ち上がるが、すぐさま男に服の背を引かれ、再びベンチへ。 先程からこの繰り返しである。 「何故そなたに我の姿が視えるのか…不思議で仕方が無い…!」 「僕の目が二つあるから、じゃダメなんですか?」 「真面目に答えろ」 「僕は至ってマジメに努めているつもりですがね。」 「えっ……そうか、それで真面目であったか… すまな「嘘に決まっているでしょう。」………。」 表情の変化も目立たず、面倒くさそうに淡々といなす少年に、 困惑から苛立ち、また困惑、驚き…とコロコロと表情を変えながら 寒さしのぎのおもちゃにされる男。
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