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そろそろ寒さに我慢が出来なくなってきたらしい。
触らぬ神に祟りなし、とばかりに帰ろうとする少年を、男はなおも引き留める。
「あの、帰りたいんですけど。」
「だからだな、我が視える理由を説明してから…」
「質問の意味が理解できかねます。
それではさようなら。」
「か・え・る・な!!」
少年は立ち上がるが、すぐさま男に服の背を引かれ、再びベンチへ。
先程からこの繰り返しである。
「何故そなたに我の姿が視えるのか…不思議で仕方が無い…!」
「僕の目が二つあるから、じゃダメなんですか?」
「真面目に答えろ」
「僕は至ってマジメに努めているつもりですがね。」
「えっ……そうか、それで真面目であったか…
すまな「嘘に決まっているでしょう。」………。」
表情の変化も目立たず、面倒くさそうに淡々といなす少年に、
困惑から苛立ち、また困惑、驚き…とコロコロと表情を変えながら
寒さしのぎのおもちゃにされる男。
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