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「…かん……勘、違い…?」
予想もしていなかった少年の解答に、
男は口をぽかんと開け、マヌケな顔で聞き返す。
「はい。
昨今の日本人の、"触らぬ神に祟りなし精神"をご存知ですか?」
「んぇ?あ、あぁ、事なかれ主義、というやつであろうか…」
未だ混乱する頭を現実へ引き戻しながら、記憶を探る男。
「えぇ、よくご存知のようで。
つまりは、そういう事でしょう。」
「…?
つまりは…どういう事なのだ?」
「…"アナタの事が見えていない"のではなく、"見て見ぬフリをされている"のでは?と。」
「見て見ぬフリ…? …何故!?」
全く理解が出来ない、といった様子である。
「…先程も言ったように、『事なかれ主義』ですから。
誰だって、本人が自覚してしまう程の変人に絡んでまで、面倒事に巻き込まれようだなんて…少なくとも日本人の9割はそんな考えを持たないでしょう。」
「だ、が…しかし…、」
納得のいかない男。
しかし少年は、
「要するに、そういう事なんです。
アナタは『ヒトには見えない特別な人』ではなく、
道往く人々の脳内から自動的に削除される『他人には見えない可哀想な人』だったんですよ。」
冷徹に、告げた。
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