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僕は、ある雑居ビルの前で立ち止まっていた。
このビルの3階に、目的地の“小谷法律&探偵事務所”がある。
僕は英太郎さんにもらった名刺をポケットから出して、しげしげと眺めた。
そこには“小谷法律&探偵事務所・法律部門 小谷千晶・探偵部門 白田栄”とあり、電話番号とメールとホームページなどが書いてあった。
連名の名刺ってのもあるんだな。
それで僕は、前もってホームページもチェックした。
それは最低限のシンプルなもので、僕は今日の事をメールの相談フォームで何度かやり取りをしていた。
その相談メールの返信は、丁寧で好感が持てた。
僕はハーッと溜め息をついたあと、ビルの中に入って行った。
小谷法律&探偵事務所のドアの前で、僕は考えた。
来たのはいいけど何て言おう、どう切り出そうか。
メールで相談していたとはいえ、こういう所は初めてだし収録とは違った変な緊張を感じてしまう。
「あのさぁ、そこ邪魔なんだけど。
ウチに何か用?」
急に話し掛けられて、僕はドキッとしながら振り向いた。
そこには、まるで僕を値踏みするかのように見ている制服姿の少年が居た。
たぶん、高校生くらいだろう。
「あぁ、ごめん、えーと」
「僕に用……じゃなさそうだよね。
もしかして事務所の客?」
少年は、ますます不躾に僕をジロジロ見てくる。
その視線に軽く居心地の悪さを感じたけど、僕は努めて平気なフリをした。
「一応客っていうか、約束は……してる」
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