収録ダルい

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“スター(のぞ)()隊(あんな事こんな事、貧乏、苦労してるんです)”という番組の収録中。 ライトにガンガンに照らされるからか緊張のせいなのか、僕はジットリと汗をかいていた。 数々の不幸ネタを持った出演者達は、ほんの少しの僕の番さえガツガツと割り込んできた。 僕は「はい」「いいえ」くらいしか、話していない。 自分の過去を切り売りして出させてもらっているこの番組にも、そろそろ呼ばれなくなるかもしれない。 我ながらネタがもう無い感じだし、心の引き出しを探してもゴミくらいしか見つからない気がする。 そうこうしているうちに、やっと収録が終わった。 ライトがアッツイし喉が渇くし、衣装が蒸れて(かゆ)いし……本当ダルい。 安いテラテラな生地は、ぜんぜん汗を吸わない。 ウチの事務所は弱小で僕は売れないお荷物アイドルだから、衣装に金がかけられないのは理解している。 収録中くらいは我慢できるけど、周りに汗臭いと思われないように気をつけないと。 そんな僕“赤木(あかぎ)(ただし)”は、不幸ネタの特番にだけ時々というか、たまに呼ばれる。 現に今まで収録していたのがタイトル通り、その(たぐ)いの番組だ。 トーク(りょく)のない僕は、だいたい軽くエピソードをアナウンサーなどに語ってもらったあとに“お前、暗いなぁ”と少しいじられるくらいだ。
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