不幸ネタ

2/5
前へ
/669ページ
次へ
 白田さんに渡された紙に必要事項を記入しながら、僕は話し始めた。 それは一つ一つ、例えば苗字を書いてはポツリと話し、名前を書いてはポツリと話すという感じだった。 彼は急かすでもなく、そんな僕のペースに合わせてくれているようだった。 「実君が言った通り、僕は不幸ネタでテレビに……。 あの、見た事ありますか?」 「あぁ、はい、何度か。 確か小さい頃に、ご両親が行方不明になったんですよね。 それで今回のご相談は人探し、つまりご両親を探すという事でよろしいでしょうか」 白田さんは僕の両親が行方不明という言い方をしてくれたけど、結局は僕が置き去りにされたのが事実だ。 そう、いつの間にか僕は独りぼっちだった。 番組で他の出演者から突っ込まれたら、僕は「いえ、両親が行方不明なんです」と返すように決まっている。 「はい、それで見つかったら……って気が早いですよね。 それに生きているかも分からないのに」 「必ず見つけますとは言えませんが、微力を尽くします。 とにかく何でもいいので、ご両親の情報を……。 例えば口癖でも好きな食べ物でも、覚えている事を教えてください」 「両親の情報……。 そうですよね、そりゃそうだ」
/669ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加