25人が本棚に入れています
本棚に追加
白田さんに言われて、僕はその事にやっと思い至った。
何の情報もなく探してくれなんて、無理にも程がある。
でも……。
「あの、じつは大した事は覚えてないんです。
何でだろう、5才くらいだったから少しは覚えていそうなものなんだけど。
親の顔もボンヤリして思い出せないんです」
「そうですか、それは仕方ないですよね。
何か思い出したら、ご連絡ください。
こちらからも定期的に報告します」
「すみません、こんなに少ない情報で無理言って。
あの、ダメだったらダメでいいですから。
そうだ、たぶん僕を保護してくれた所なら親の情報……が、……少しは」
白田さんはメモをとっていたけど、僕が言い淀んで黙ったので心配そうな顔でこちらを見た。
「どうかしましたか?
顔色が良くありませんね、少し休みましょうか」
彼の言葉で、僕はそんなに顔色が悪くなっているのかと気が付いた。
「いえ、具合が悪い訳じゃないんです、ちょっと仕事の疲れが……。
考えたら、僕は親の名前くらいしか自分で調べてなかった。
これって、変ですよね」
そう言って、僕は白田さんに視線を移した。
「どうしたら正解かなんて模範解答もないし、誰かが決め付ける事でもありませんから。
それに赤木さんは今、ここに居るじゃないですか」
彼は、真剣に返してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!