25人が本棚に入れています
本棚に追加
では僕は19だから、どちらにしろ彼の方が年上なのか。
なんて考えていると、会議室から出てきた白田さんが呆れた様子で溜め息をついた。
「こら志郎、お前何やってんだ?」
すると志郎君は明らかにビクッとして、焦ったようだった。
「あ、あの、ボス。
えと、これはですね」
「あー、もういいから仕事に戻れ。
ったく、しょうがないな。
それから、アレは忘れてないだろうな」
「いえ、はいっ、あの、出しときますっ」
志郎君はカバンを掴むと、僕に一礼をして早歩きで出て行った。
「あはは、志郎、競歩みたいになってる。
いつもならバタバタ走って行くのに、客がいるから気取ってんのかな」
愉快そうに言う実君を見て、白田さんが小さく肩を落とした。
「気取ってるんじゃなくて、気遣いだろ。
お前はいい意味でも悪い意味でも、本当マイペースだよなぁ」
実君は、また白田さんを無視して僕を見た。
「ところでさぁ、やっぱ依頼って親探し?
前にテレビでさぁ“本名でアイドルしてるのは、有名になったら親が名乗り出てくるかもしれないから”って言ってたよね。
なかなか売れないから、とうとう探偵に頼みに来た?」
彼の言葉は図星だった。
僕は愛想笑いになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!