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それさえもカットされていた時は、虚しさを噛み締めながら“人数合わせでもギャラが発生するだけで有難い”と思う事にしている。
僕は一応アイドルだけど、テレビで歌った事は一度もない。
もう“アイドルって何だっけ?”と、訳が分からなくなっている。
「お疲れ様でしたぁ」
僕に声をかけてくれたのは、そろそろ若手と交代を噂されているアシスタントのお姉さんだけだ。
彼女は司会者にセクハラ発言を連発されても笑顔だし、根性あるのかも。
「あ、お疲れ様です」
とりあえず、僕も頭を下げる。
挨拶はきちんとしろって、事務所社長の英太郎さんに厳しく言われてるし。
僕みたいなのを雇ってくれて、本当に感謝してる。
自分の事ながら、この仕事は向いてないと思うんだけど。
僕なんて、良くて雑務の補助要員くらいじゃないかな。
ウチの事務所は貧乏で少人数だから、結局タレントも雑務をしているけど。
まぁ僕も、他に何したらいいか分からないし。
とりあえず今は、この仕事を続けるしかない……か。
「お疲れ様です」
と言っても、他の出演者は僕の声が聞こえないのかフリなのか、だいたい返事は返って来ない。
カカシにでも、話しかけてる気分だ。
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