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収録の後に向かった僕の楽屋は、贅沢な事に個室だ。
これは、スタッフに評判がいいらしい事務所社長の英太郎さんのおかげだろう。
僕が楽屋の中に入ると、ゴロリと横たわっていたものがムクリと起きた。
「緑、居たのか……」
「おー、おかえり、どうだった?」
寝ぼけまなこをこすりながらアクビをしているのは、英太郎さんの甥の佐々木緑だ。
僕達は、二人でアイドルデュオ“昴”をしている。
自分でも時々、本当にアイドルなのか自信がなくなるほどそれっぽい仕事はないけど。
「いつも通りだよ。
挨拶という名の独り言は、ちゃんと“しつこく”してきたから。
ていうか昼寝するなら何か掛けないと、風邪でもひいたらどうするんだよ」
「あはは、たっちゃんは心配性だな。
大丈夫だよ、オレ見た目より頑丈だから」
僕の名前が正だから“たっちゃん”と、緑は呼ぶ。
そんな事はこれまでなかったし何ともこそばゆいけど事務所の皆もそう呼ぶし、かなり慣れた。
さっきまで昼寝をしていた緑は、別に具合が悪いようでも疲れが残っているようでもなく元気そうだ。
でも……。
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