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この1週間で、保健室の光景が大分変わった。
「せんせーが学校の物を私物化しちゃって、怒られないんですか」
「そうねぇ……。今からこのカフェオレを口にする内宮くんは共犯になるから――その時は、同行お願いね?」
「え……ちょっとなに言ってんのか分かんないです」
2人の会話を耳に入れながら、窓の方に顔を向ける。
窓は開いてるのにカーテンは揺れてなくて、ジリジリ日差しが射し込んでいる。
少し前まで、動いたらじんわり汗をかく程度の暑さだったのに、今はじっと座っているだけでも汗ばむ。
でも、保健室の変化はこの気温のせいだけじゃない。
私がここに来て、花保ちゃんが学食に行くまでの間、静かに響いていた2つの声は3つに増えて。
1つ増えただけなのに、保健室は、静かな時間を忘れてしまったみたいに賑やか。
「内宮 風花」
昼食を食べ終えた先輩が突然、私をフルネームで呼んだ。
湯呑みを利き手で持って、もう一方の手を底に添えて、真っ直ぐ綺麗な姿勢でいる花保ちゃんと目を合わせる。
ちなみに、花保ちゃんが飲んでいるのはお茶ではなく、私と同じアイスコーヒー。
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