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先輩がこの学校にやって来て、1週間。
あの日、花保ちゃんから私の話を聞いたからか、それで同情したからなのか、それとも何も意味なんてないのか。
昼休みに私がここへ来ると、いつも先輩が居るようになった。
「“おかえり”って、なんですか……」
体育館で倒れてしまった日の翌日から、今日まで。
この時間は毎日、先輩と顔を合わせている。
あ、と口を開けてあんパンをかじる先輩。
「なんほなく」
「……」
“おかえり”
なんだかしっくりくるのは、昼休みが終わってここから出る瞬間、教室に行ってくる、っていう気持ちになるから。
だからここへ来ると、ただいま、って気持ちになる。
行ってきます、ただいま。
私にとって保健室は、そんな場所。
「内宮さん、丁度いいタイミングで来た。なに飲む?」
小さな冷蔵庫の上で、水玉模様の湯呑みにカフェオレを注ぐ花保ちゃんが聞いてくる。
棚にあるポットは、この時期休息中。
「無糖のアイスコーヒー、冷やしてあるけど」
「飲みます」
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