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「ここ、気ぃ遣うとこ」
後ろに向かって、微かに笑ってる先輩の声がする。
「ほーい。んじゃ、俺達は上島の家行ってるから、後でおいでよ」
「え。聞いてないし、部屋汚いし」
「じゃあねー、晴香。また明日」
「おい、五百蔵」
声が階段を降りていく。
「行かなくていいんですか?」
視線は膝に落としたまま、頭を上げてポツリと聞く。
「後で行くから。今は、夏休みなのに学校にいる風花のが面白い」
面白い? なんだそれと思いながら、先輩を見る。
夏休みに入って、先輩と会わなくなってまだ1週間しか経っていないのに、先輩の茶髪とピアスが懐かしく感じる。
牛の花輪みたいなピアスを見つめていると、先輩は少し目線を上げてハッと息をこぼして笑う。
何も言わずに手が伸びてきて、何度か前髪を上から下に撫でられた。
「足、痺れない?」
立ち上がる先輩に続いて私も膝を伸ばすと、さっき俯いたからぐしゃぐしゃになってたのかな、と撫でられた前髪を気にしながら立入禁止のロープを跨ぐ。

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