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「先輩のクラスは、喫茶店?」
「うん」
先輩が長袖のシャツの上から着ているエプロンを、じっと見つめる。
フリル……。
「秘密基地行くか」
可愛らしいエプロンを脱ぐ先輩は、それを大雑把に丸めると、教室の中にいる友達の名前を呼びながらその人に向かって投げる。
「あ、あの子」
ふいに聞こえた声に私は、うん、と頷こうとしたのをやめて、視線を横へ流す。
先輩と同じようなエプロンを着た女子が2人廊下に立っていて、その手には“喫茶”と書かれたプレートを持っている。
「晴香が転校してきた日に、体育館で倒れた子じゃない?」
はるか……。
女子がこちらに視線を向けて目が合う前に、私は先輩のシャツのボタンに視線を戻す。
「晴香と仲良いのかな?」
「えー、なんか弱み握られてるとか。大人しそうな子だし」
頑張って、来れたのに。
“これだけ人がいたら、簡単には上に行けないな”先輩が私に話してるのに、私の耳は女子のヒソヒソ声を拾ってしまう。
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