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そっか、と流れる雲を追っていると、今度は先輩が聞いてくる。
「お前は?」
「私は……分かんない」
「何それ」
「うん。私も分からない」
今まで私は、最低でも先輩と会うまでの私は、もう誰も好きになんてならないと頑なに思ってた。
今は、子供染みたこと言ってたなぁ、と少しだけ思う。
そう思う私は、あの日から進めているのかな。
学校の帰り道、手を繋いだカップルを見ても恋しいと思わない。
私の手の平に風がすり抜けていく感触に、寂しいと感じることもない。
でも今、例えば傍にいる先輩の、茶色い髪は柔らかいのかな、とか。
喉仏や、私にはないゴツゴツした身体中の骨に……触れてみたい、とか。
もう嫌だとあれほど拒絶していた感情が、ふわふわ胸の中にある。
見ないふりをしているだけ。
あの日の私と今の私が、目に見えないところで闘ってる。
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