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「内宮くんは小さい頃、児童養護施設に保護されていたことがあって」
「……」
予想もしなかった言葉に喉が塞がる。
花保ちゃんの動く口を、じっと見つめた。
「実の親から心理的虐待を受けて……。
里子としていい里親さんに引き取られたけど、親のいる街からずっと出たくて、自立したくてこの街にやって来たって聞いたわ。
今は、頑張って1人暮らしをしてる」
貴方と同じように、そう言ってまた、花保ちゃんは表情を緩める。
「さっき私、今日の内宮さんを見て過去を思い出したのかもしれないって言ったでしょ?
内宮くんも、貴方と同じ発作を抱えているの。
高校生になってからは一度も起きてないみたいだけど、中学生の頃は幼い時の記憶が原因でよく苦しくなってたって」
「……うそ」
何も考えずに出た言葉はそれだった。
半分笑った顔が、引きつる。
「嘘だって思いたいよね。私だって、他の先生から知らされた時は信じられなかった。
高校2年間働いて貯めたお金で家を借りて、最低限のことは何もかも自分でやってるって」
頬を下げて、花保ちゃんの横顔を息を詰めて見つめる。
「この話を聞いても、さっきの言葉が言えるか、考えてみるといい」
さっき、私が言った言葉――。
“先輩が分からない……”
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