07.-2

11/23
前へ
/23ページ
次へ
チラッとこっちに視線を向ける花保ちゃんが、なんでそんなに柔らかい表情をしているのか分かった。 両手をいっぱいに広げて、今すぐ先輩の体をぎゅっとしたい。 嫌がられたって、隙間なく。 先輩を想うと、あったかくて切ない気持ちになる。 たまに私を見る目が優しくて、それを見ると悲しくなった。 先輩……先輩――。 顔が見たくなる。謝りたいと思う。 なんで急にそんなことを言い出すんだろうって、もう何度も頭の中で考えてた。 先輩は知ってるんだ。 知ってるんだね、先輩。 私に教えてくれようとしたの? 私でも……変われるかな。先輩みたいに。 「転校してきた日、体育館から運び出される貴方を見て、いつかの自分と重なったんじゃないかな」 「……そんなの、全然知らなかった」 「今まで、傍で守ってくれてたんだね。守ろうとして傷付けてしまうことが動物にはあるけど、人間もまた、そうなのかもしれないね」 窓の外を見ると、空き教室で先輩の傍で眺めていた空がある。 流れる景色を見つめながら、先輩が言っていた言葉を1つ1つ思い出した――。 「ありがとうございました」 「いいえ。さっきの先生の独り言、内宮くんには言わないでよー?」 夕日をバックに笑う花保ちゃんの笑顔は、とても眩しい。 「花保ちゃん、ありがとう」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加