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チラッとこっちに視線を向ける花保ちゃんが、なんでそんなに柔らかい表情をしているのか分かった。
両手をいっぱいに広げて、今すぐ先輩の体をぎゅっとしたい。
嫌がられたって、隙間なく。
先輩を想うと、あったかくて切ない気持ちになる。
たまに私を見る目が優しくて、それを見ると悲しくなった。
先輩……先輩――。
顔が見たくなる。謝りたいと思う。
なんで急にそんなことを言い出すんだろうって、もう何度も頭の中で考えてた。
先輩は知ってるんだ。
知ってるんだね、先輩。
私に教えてくれようとしたの?
私でも……変われるかな。先輩みたいに。
「転校してきた日、体育館から運び出される貴方を見て、いつかの自分と重なったんじゃないかな」
「……そんなの、全然知らなかった」
「今まで、傍で守ってくれてたんだね。守ろうとして傷付けてしまうことが動物にはあるけど、人間もまた、そうなのかもしれないね」
窓の外を見ると、空き教室で先輩の傍で眺めていた空がある。
流れる景色を見つめながら、先輩が言っていた言葉を1つ1つ思い出した――。
「ありがとうございました」
「いいえ。さっきの先生の独り言、内宮くんには言わないでよー?」
夕日をバックに笑う花保ちゃんの笑顔は、とても眩しい。
「花保ちゃん、ありがとう」
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