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「先生、こいつ保健室連れてくから、扉開け係に任命する」
「わ、分かりましたっ」
折り畳んだ膝の裏に先輩の冷たい手が入ってくる。
背中から脇の下にも手が入ってくると、ふわっと体が浮いて足の裏の固い床の感触がなくなる。
「ハ……ハァ……ごめ……なさい」
ちゃんと、謝れた?
揺れる体、先輩の顔を見上げると、優しく頭を撫でられる。
きっと言えた――そう思う私は、そっと瞼を下ろした。
「先生、一旦体育館に戻って担任の先生に報告してくるわね」
「うん」
「薬、保健室に置きっぱなしで全然飲んでないみたいだから、もし起きたら飲ませて」
「かしこまり」
そっと目を開ける。
開いたのか閉まったのか、保健室の戸が引かれる音がする。
体育館から漏れるマイク越しに喋る校長先生の声も、微かに耳に届く。
ここは、保健室のベッド。
「先輩……?」
「ん、起きた?」
間仕切りカーテンに、椅子に座っている先輩の影が浮かんでる。
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