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小さな薬を舌に乗せて、湯呑みを口に運ぶ。 冷えた水が、喉の奥で染みる。 ――コク 「ハ……」 「飲んだ?」 「うん」 また先輩の手だけがカーテンから出てきて、空になった湯呑みを渡す。 「先輩、もう戻ってい、」 「お前さ」 「え?」 「めんどくさい生き方してるね」 「……え?」 先輩に、私の一番のトラウマの話はしなかった。 してないから、先輩は悪くもないし、悪意がないってことは分かってる。 ――けど。 めんどくさい? 間仕切り越しでさえ、先輩の方を見れない。 は……。 「え?」 「なんでそんなビクビクしてんの」 いつもは聞いてて心地良い、先輩の喉で響く低い声。 「聞かなくていいことは、聞かなくていいんだよ」 それはとても優しい台詞なのに、私は素直に聞き入れることが出来ない。 はぁ、と相槌を打つものの鼻で笑ってしまう。
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