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たった今、薬を飲んだばかり。
「ここは、私の居場所だったんだよ?」
もしここで発作が起これば――
「泣けないんだもん。1人なんだもん。何が辛くて、どんな時に泣いて吐き出せばいいのか、教えてくれる人ももういないんだもん」
眉間にシワを作って、頭で言葉を整理しないまま大きく口を動かした。
耳をおもいきり押さえたら、ピアスが首に食い込んで痛い。
「出てってよ……」
もしここで発作が起これば――
先輩に、こんな酷い言葉を吐く余裕なんてなくなるのに。
「風花」
「お願い、出てって!」
もう、体育館から漏れる校長先生の声も聞こえなくて。
校舎には、先輩と2人。
只でさえ静かな保健室が、静まり返った。
少しすると、間仕切りの向こうから声が聞こえてくる。
「発作は、風花が“頑張ってきた証拠”なんだから」
強く閉じていた唇から力を抜いて、耳を塞いでいる手をそっと離す。
「せ……」
「よく頑張った、凄いなって、もっと自分を褒めてやれよ」
な?と優しい声がすると、キュ、と上履きが鳴って、戸を引く音がする。
「せんぱ……」
トン、と戸が閉まる音が聞こえると、間仕切りで見えない向こうを見つめた。
夕日はもう、誰の影もうつしていない。
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