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「あれ、内宮くんいないの?」
静かな保健室に聞き慣れた声が響く。
膝を抱えて間仕切りを見つめていると、カーテンが少しだけ開いてそこから花保ちゃんが覗いてくる。
「あ、起きてた? 大丈夫?」
私は何も答えずに、つっと視線を落とした。
「他のみんなはまだ体育館で話聞いてるけど、内宮さんどうする? 帰れそうなら、車で送るわよ」
「……」
「内宮さん?」
私は、いつから泣いてないだろう。
「お願いします」
ベッドから下りて上履きを履く。
先輩にあんな態度を取ってしまった後なのに、薬が効いて、可笑しなほど気持ちは落ち着いてる。
「カバンは?」
「文化祭の間は、持ってくる物がないですから」
「あ、そっか。でも、お財布とか携帯とか」
スカートのサイドポケットから小銭入れを出すと、手の平に乗せて花保ちゃんに見せる。
「フフ、身軽でいいね」
花保ちゃんは、いつも通りに接してくれる。
なのに、先輩はなんで――。
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