最終章

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「先輩……もう1年ここにいる?」 「縁起悪いこと言わないで」 「嘘だよ」 先輩が笑うと、伝染したみたいに私も笑う。 先輩と付き合う前よりもっと、笑うのが増えた。 「息が白いよ先輩」 「そうだね」 「もうちょっとで卒業だよ先輩」 「そうだね。……なに、寂しいの?」 前にも聞かれたことがあるのを思い出して、笑みを浮かべてわざと答えない。 ふと隣を見上げると、目を薄めた先輩に見つめられる。 「そろそろ寂しいだろ?」 ホッカイロを挟んで繋ぎ直した手に、私はぎゅっと力を込めた。 「寂しいよ」 声を落とさないように、全然寂しがってない声で言う。 「……」 目と目を合わせて、見つめて。 私は少し顎を上げて、先輩は少し屈んで。 こうして空き教室でキスをするのも、いつか当たり前じゃなくなるんだね。 「先輩、唇も冷たい……」 「今度、コタツ持ってくるか」 「どうやって?」 「じゃあ、毛布」 「フフ。そんなの置いといたら、見回りの先生にバレちゃうよ」 先輩との冬。 学校で、最後の冬。
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