最終章

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「まだ、待って」 待って、だって。 何を?って聞きたかったけど、言ったら先輩は繋いだ手を解いて、私を1人置いて走り去ってしまいそうなくらい恥ずかしそうにしてるから、聞かないでおいた。 授業中に、そんなこと考えてたの? 私にとっては少女漫画のヒーローみたいにカッコイイ先輩が、この時は少し可愛く思えた。 あと、何日先輩と一緒に帰れるんだろう。 来年になったら3年生は自由登校になって、そうすると、あっという間に卒業式。 残る日数を心の中で数えながら、先輩の隣で冷たい色をしている地面の上を歩く。 寒いけど、鼻の天辺は真っ赤で痛いけど、先輩と歩く冬が楽しい。 寒いって理由ですぐに手が繋げるから。 互いの吐く息が白い。それだけでなんだか面白くて、顔を見合わせて笑う。 しあわせ。 忘れていた、懐かしい気持ちが満ちていく――。 冬休みになると、クリスマスに先輩からお揃いのピアスを貰った。 最初に先輩と言葉を交わした時、『この中だとどれが可愛い?』と聞かれて指差したピアスの色違い。 猫の頭がキラキラ光を反射して、あれから何度か可愛いって言うことがあった。 だから、包装されてリボンの付いたピアスを渡された時は、心が踊り出しそうなほど嬉しかった。 私の言葉を、先輩が覚えてくれていることが嬉しかった。
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