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彼女の背中を見つめていると、突然、誰かに肩を叩かれた。
びっくりして肩が跳ねる。
顔を上に向けると、以前話し掛けてきてくれたクラスの男子が立っていた。
「セカンドピアス、もう付けてるでしょ」
まともに話したのはこの間のたった1回だけなのに、本当に変わった人……、と心の中で思う。
私が何かをなぞるように頷くと、
「見せて」
と興味津々な目をして言うから、私は髪を耳にかけて、先輩とお揃いのピアスを見せる。
「綺麗だね」
先輩から貰ったものを、人が褒めてくれた。
胸がむずむずする。嬉しい。
「ありがとう」
私のその小さな言葉を聞くと、男子は明るく笑って教室から出ていく。
風みたいな人、そう思いながら椅子を後ろに引く私はのっそり立ち上がると、机の横に下げているコンビニ袋を取る。
教室を出ようとしたら、視界の端にまた“えり”が見えた。
周りの机は動かされていて、ポツンと1つだけ前を向いている机。
第三者の目で、自分を見ているような気になる。
“誰かに話し掛けるなんて、もう今更無理かもしれない。
でも今は、少しずつ頑張ってみようかなって思ってる”
先輩に言った自分の言葉を思い出した。
そういえば、まだ何も頑張れてない。
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