おまけ

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  誰かを愛せるか不安だった。 でも、誰かに愛されたくて仕方なかった。 ――ピン、ポーン 家のインターホンが鳴るけれど、ベッドに寝そべったまま起き上がろうとしない。 暫くすると静かに玄関の重い扉の開く音がして、すぐに鍵を閉める音も聞こえる。 短い廊下を歩く足音が近付いてくると、やっと俺は携帯画面から視線を離す。 「晴香先輩」 肩に手提げバッグを掛けた彼女は部屋に入ってくると、俺の名前を呼びながら表情を崩して笑う。 彼女が家に泊まりにきた。 「どした?」 「居るなら出てきてよ」 「風花が来るから鍵開けてんだろ? 勝手に入ってきなさいよ」 「……」 口を閉じて、まだ何か言いたげな顔をしている。 「またスーツ着たまま横になってる……」 「上着はハンガーに掛けたよ?」 「ズボンもシワになっちゃう」 高校生から社会人になった俺に、上司も彼女も厳しい。 「お前くらい優しくしてよ」 「じゃあシャツを脱いでください。先輩のためを思って言ってるんだから、これも優しさの内でしょ?」 あぁもう、と体を起こして風花の手を引く。 「わ――」 彼女が目の前にいるんだ。 「小言も聞くから、取り敢えずひっつこ」 前のめりになる体を受け止めて、膝を立てた足の間に向こうを向かせて座らせる。 半袖から出ている肌が柔らかい。 あぁ、落ち着く。 けど、 「暑い……」 「暑いね。離れる?」 「いい」 そう言って頭の後ろに鼻先をつけると、風花が使っているシャンプーの甘い匂いがした。
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