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「あ、風呂入ってきた?」
「うん」
「なんだ。一緒に入ろうと思ったのに」
「だから、まだ着替えてなかったの?」
腕の中にすっぽり収まった風花が、首を後ろに回して見上げてくる。
これが全くの図星で、何も言い返せない。
はじめて彼女が泊まりにきたら、そりゃあれもこれもしたいって思うだろ?
「……今日、初めて契約とれた」
「え」
目を丸くして、ゆるゆる笑って自分のことのように喜んでくれる風花を見ると、もっと頑張れそうな気になる。
自分の腕の中で笑う彼女を見下ろして、いつまでもこの時間が続けばいいと願った。
でも俺は、神様がそんなに優しくないことを知っている。
「――先輩の馬鹿っ」
テレビでも見ようかとベッドにもたれて画面を見ていると、そりゃ男ですから、隣にいる彼女に触れたいって思うわけですよ。
自分が開けたピアス穴を見つけて、耳たぶを摘んで遊んでた。
くすぐったそうにしてるのを見て、こっちを向かせてキスしようとしたら、急に眉間にシワを寄せて馬鹿だと言われてしまう。
「な、なに」
「ドラマ、今いいとこだったのに」
「お前ねぇ、泊まりにきてんだからちょっとは俺の相手しろ」
「テレビ見るかって言ったのは晴香先輩だよ。遊びたいなら遊びたいって言ってください」
なら、したいって言ったらさせてくれる?
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