巣くうものたち

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「満足したか?」  通路の隅で、ひげの男がきいた。俺の返事など、わかりきったような顔をして。 「やっぱり、俺は……」 「吸血鬼だよ、おまえもオレも……、あの連中もな」  そう言うと、男はまたスマートフォンを取り出して俺に見せた。 「オレたちのグループラインだ。また血を吸いたいなら、おまえも登録しろ」  俺は吸血鬼になったことに、驚きも悲観もしていなかった。それどころか、さっき味わった血の味がよみがえってきて、あの快楽をもう一度味わいたいと思っていた。だから男の言うことに素直に従った。  ここでは、このひげの男がリーダー的な存在らしい。夜は皆、街へ繰り出して獲物を探すが、太陽の出ている昼間はここが「餌場」なのだ、と男は言った。太陽に当たるとどうなるか、おまえも知っているだろう、と。 「食事は順番だ。時間も決まっている。自分の時間までに獲物を見つけて、ラインで駅名と乗り場を送るんだ。そこへほかの連中が駆けつけて、さっきのような要領で獲物を狩る」  ひげの男は簡単に説明をすますと、最後に自分の名前を「アキラ」と名乗った。アキラはスマートフォンをポケットに入れると、一緒に来い、と言いながら歩き出した。
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