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「今から、エサをやりに行く」
「エサ?」
それ以上の説明はなく、アキラは黙ったまま地下鉄の通路を歩き続けた。この駅には複数の地下鉄の線が乗り入れていて、アキラはG線の上りのホームへと入っていった。
そして一番後方の乗り場へ着くと、少し離れた場所に立った。
「この乗り場の噂を、聞いたことがないか?」
アキラは腕を組んだまま、意味ありげな笑みを浮かべた。
「噂? G線上りのホームの一番後ろ……、たしか、飛び込み自殺が多いって」
俺がそう答えたとき、若い女がやってきて俺たちの前に立った。少ししてホームにアナウンスが流れると、電車が近づいてくる音が聞こえた。
アキラが組んでいた腕を解いて、動いた。女の背後へと、近づいていく。
まさか……
電車のライトが見えた瞬間、アキラは女を背後から思いきり突き飛ばしたんだ。
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