巣くうものたち

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 どうやら、あの女は吸血鬼だったようだ。  それが、俺の出した結論だった。  女と出会ったのは昨日の夜、馴染みのバーでのことだった。彼女はカウンターに一人で座って、マティーニを飲んでいた。  肩までの真っすぐな黒髪と、タイトスカートから伸びる細くて形のいい脚。カクテルグラスに口づける美しい横顔に、俺は一瞬で心を奪われた。 「となり、いいかな?」  そう声をかけると女はゆっくり振り向いて、長い睫毛の奥にある瞳に俺の顔を映した。それから返事をするかわりに、艶めかしい紅い唇の両端を持ち上げたんだ。  そのあとの俺は、彼女を口説くのに必死だった。興味を引くような話をしたり、その美しさを褒めたり……、彼女はそのたび、楽しそうに笑っていた。  その女のすべてが、魅力的だった。俺は、彼女を抱きたいと思っていた。そして彼女のほうも、まんざらでもないことを知っていた。  三杯目のマティーニが空になったとき、俺は目だけで合図をして、彼女と二人で席を立ったんだ。
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