14人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
ホテルを出ると、太陽は昼の位置まで昇っていた。夏でもないのに、じりじりとした暑さが俺を襲う。
アスファルトの上を歩くたびに、その暑さはひどくなっていく。
だが、そのとき俺は気づいたんだ。それは汗が出るような、体の内側から感じる暑さではなく、皮膚の表面が焼けるような熱さだと。
ワイシャツの袖を捲り上げると、見る見る腕の皮膚が赤く色を変えて、湯気のような煙が立ちのぼるのが見えた。
太陽に当たっている顔や首や腕が、火傷をしたみたいな激しい痛みに襲われて、俺は逃げるように近くにあった地下鉄の入口へ駆け込んだんだ。
太陽の当たらない場所にいると、少しずつ痛みは和らいでいった。何か皮膚の病気だろうか、そんな疑問は駅のトイレで鏡を見た瞬間に消えてしまった。
痕がある……
俺の首筋に、何かを刺したような小さな痕があった。
昨夜の光景を、思い出した。女が、俺の首筋に唇を当てた瞬間を……
どうやら、あの女は吸血鬼だったらしい。
そう結論づけたのは、何より俺の喉がからからに渇いていたからだ。そして、その喉が欲しているものが、水ではなかったからだった。
吸血鬼に噛まれたものは、吸血鬼になってしまう。それは、ただの古い言い伝えではなかったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!