巣くうものたち

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 ホテルを出ると、太陽は昼の位置まで昇っていた。夏でもないのに、じりじりとした暑さが俺を襲う。  アスファルトの上を歩くたびに、その暑さはひどくなっていく。  だが、そのとき俺は気づいたんだ。それは汗が出るような、体の内側から感じる暑さではなく、皮膚の表面が焼けるような熱さだと。  ワイシャツの袖を捲り上げると、見る見る腕の皮膚が赤く色を変えて、湯気のような煙が立ちのぼるのが見えた。  太陽に当たっている顔や首や腕が、火傷をしたみたいな激しい痛みに襲われて、俺は逃げるように近くにあった地下鉄の入口へ駆け込んだんだ。  太陽の当たらない場所にいると、少しずつ痛みは和らいでいった。何か皮膚の病気だろうか、そんな疑問は駅のトイレで鏡を見た瞬間に消えてしまった。  痕がある……  俺の首筋に、何かを刺したような小さな痕があった。  昨夜の光景を、思い出した。女が、俺の首筋に唇を当てた瞬間を……  どうやら、あの女は吸血鬼だったらしい。  そう結論づけたのは、何より俺の喉がからからに渇いていたからだ。そして、その喉が欲しているものが、水ではなかったからだった。  吸血鬼に噛まれたものは、吸血鬼になってしまう。それは、ただの古い言い伝えではなかったようだ。
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