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地下鉄の駅のホームに並んだ椅子に座って、俺はどうすればいいのかを考えていた。だが答えなど見つかるはずもなく、途方に暮れていた。
そのとき、俺の前を一人の女が通り過ぎた。線路のほうから吹いた風が髪の毛を舞い上げて、女の首筋が露わになった。
白い肌に、うっすらと青い血管が浮いている。その細い首筋を見た俺は、激しい衝動に駆られたんだ。
乾ききった喉を潤したい……、あの女の白い首筋に牙を立てて、血液を啜りたい。
衝動は、俺の理性を完全に消してしまった。椅子から立ち上がった俺は、ホームを歩く女のあとをつけた。
女は階段のあたりで立ち止まって、電車が来るのを待っている。バッグから取り出したスマートフォンに視線を落とす無防備な女の背後に、俺は立った。
女の髪の毛が風になびいて白い首筋が見えるたびに、俺の息遣いも荒くなった。左右の犬歯が大きく膨らんで、先が尖っているのがわかる。
もうだめだ、我慢できない……
背後から女を襲おうとした、そのときだった。誰かが、俺の腕を掴んだんだ。
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