第9章 好きだから……

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「へへぇー…バレちった」 悪びれもせずに、ガキみたいに笑う渋谷。 「でも、まあ…最初、支えたくれたのはサンキュー!」 渋谷が支えてくれなかったら、確実に倒れてた。 そこだけは、感謝する。 「その位は当たり前!蒼ちゃんが俺にしてくれた事のが、断然多いから。蒼ちゃん、俺…やっぱり自分の気持ちに素直でいる方が、幸せだって思う。だから、蒼ちゃんも……」 「…うん…そうだな」 それから、誉が俺の荷物を持って来るまでの間、俺と渋谷は何も話さなかった。 居心地悪さは感じなくて、今度は渋谷が俺の気持ちに寄り添ってくれていた。 誉と渋谷に見送られ、学校を後にした俺。 流風さんの家の方向ではなく、目的の場所を目指して、駅に向かう。 最寄り駅から、半年間慣れ親しんだ街並みを、ひとり歩く。 こうやって、ひとりでこの道を歩いたのは、数える程度。 いつも俺の隣には、大和が居たから。 目的地に着き、脚を止める。 大和に、返しそびれた鍵を玄関の鍵穴に差し込もうとしたところで、 「…蒼様?」 今朝も聴いた穏やかな声が、俺の名前を呼んだ。 俺のことを、大和と変わらずに『様』付けで呼ぶのは、ひとりしかいない。 その声の主に振り返る。 「…大川さん…」 「こちらに、お戻りになられたのですか?」 そう言って、優しげな頬笑みを浮かべ、俺を見る大川さんに、慌てて右手を左右に振る。 「ち、違うんですっ!戻って来た…訳じゃなくて……その……確かめに……」 「…大和様が、不在かどうかを…ですか?」 大川さんの問いに、首を縦に振る。 「はい……俺…何も知らなくて。大和の自主退学のこと、今日担任から知らされて…」 「…私は今…空港から戻って来た所です。大和様を、お送りさせて頂きました」 空…港…… 大和を、送って来たと言う大川さん。 家の中に入らずとも、大和の不在を、大川さんが証明してくれた。 「…大和はっ、どこに行ったんですかっ!?」 国内なのか、それとも外国なのか…… 知ったところで、俺に大和を追い掛ける手段はない。 それでも…どこに行ったのか…知りたい。
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