第3章 迷走する気持ち

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「好きでもない癖に……!」 それまで、いつものニヤケ顔でいた桐生の表情が一変する。 一緒に住むことの理由を問いた時よりも……もっと……ずっと 初めて見るくらいの……真剣な顔…… 「…好きじゃないって……何で決め付けるの?」 ……え……? 桐生の空いた手が……俺の唇を指でなぞる。 「…結城の目に……俺を映したい……他の奴に見せる笑顔を……俺にも向けて欲しい……俺を意識させるのに……他の方法が思い付かないんだ……」 …何……言って…… ゆっくり近付く、桐生の顔…… 「……蒼……好きだよ……」 熱を孕む目で見つめられ、再度重なる唇…… 意味がないと思ってた……キスに……ちゃんと意味があって…… 俺の胸の鼓動も…… 意味がある…… 「…んっ…んんっ!…ァ…あ…んんっ…」 角度を何度も変えて……奪われる唇…… ……嫌じゃない……嫌じゃないけどっ! ──ゲシッ!── 「…っ!…痛ってぇ…!」 膝を曲げて、無防備な桐生の腹に一撃を入れる。 「調子に乗んなっ!」 ……んな、簡単に……何もかも信用できるかってのっ! ……出来てとしたって……やっぱり……男同志で……ないだろ…… 快感を得たいだけなら……他の女にやればいい…… 大体……罰ゲームの流れでキスしてきて……告白されたって……本気かどうか分からない…… 「蹴ることないじゃん!」 「うるさいっ!」
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