1554人が本棚に入れています
本棚に追加
……気が重いまま……通勤、通学ラッシュの電車の中……ギュウギュウに詰め込まれた箱の中で……
……今……俺が最も目にしたくない人物が視界に入る。
朝っぱらから……誰に見られても構わないのか、はたまた見せ付けてるのか……この公共の中で……濃厚なキスを……他校の女子高生と繰り広げている……
「…チッ…!」
思わず舌打ちしてしまう。
……母さんの話を聴いた直後に……何でアイツを、俺の視界に入れなくちゃならないんだっ!
無理くり身体の向きを変え、アイツが目に入らない様にする。
ああ……気分悪りぃ……
最悪だ……
学校の最寄り駅に着き、足早に下車して、駅を出て学校へ向かう。
ちょうど、下駄箱で靴を履き替えてると、
「おはよう、蒼」
聴き慣れた声が、俺に声を掛ける。
「おはよ!誉!」
誉は、小学生からの幼馴染で、親友だ。
唯一……俺が心を開いている存在……
だからって、他にダチがいない訳じゃなくて……ありのままを見せられて……気心が知れてるから……落ち着く。
誉がじっと俺の顔を見下ろす。
190近く身長がある誉……
170チョイの身長の俺……
立って話す時は、首が痛くなる。
「…蒼…何かあったのか?」
他人じゃ気付かない……俺の小さな変化も……誉は気付く。
「…大ありだよ……」
下駄箱から教室までの道のりを、今朝あったこと全てを誉に話した。
「……桐生と……」
俺の話を聴き終えた、誉の第一声はそれだった。
「…最悪だろっ?」
俺が桐生 大和を嫌い……大嫌いな理由を知る誉は、何とも言えない表情を浮かべてる。
「…けどさ、俺の事情に…母さんのことは、関係ないから……だから、結婚には賛成……でもアイツとは、連れ子同士ってだけで、今以上に近付くつもりなんかない」
「…そうか…」
それ以上、誉も何も言わない。
だから、俺も…そこで口を閉ざす。
…そうだ……今日の食事会の時に……アイツにそれを言えばいい。
仲良くなるつもりなんて、毛頭ないと……
最初のコメントを投稿しよう!