第1章 必要以上は……

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……気が重いまま……通勤、通学ラッシュの電車の中……ギュウギュウに詰め込まれた箱の中で…… ……今……俺が最も目にしたくない人物が視界に入る。 朝っぱらから……誰に見られても構わないのか、はたまた見せ付けてるのか……この公共の中で……濃厚なキスを……他校の女子高生と繰り広げている…… 「…チッ…!」 思わず舌打ちしてしまう。 ……母さんの話を聴いた直後に……何でアイツを、俺の視界に入れなくちゃならないんだっ! 無理くり身体の向きを変え、アイツが目に入らない様にする。 ああ……気分悪りぃ…… 最悪だ…… 学校の最寄り駅に着き、足早に下車して、駅を出て学校へ向かう。 ちょうど、下駄箱で靴を履き替えてると、 「おはよう、蒼」 聴き慣れた声が、俺に声を掛ける。 「おはよ!誉!」 誉は、小学生からの幼馴染で、親友だ。 唯一……俺が心を開いている存在…… だからって、他にダチがいない訳じゃなくて……ありのままを見せられて……気心が知れてるから……落ち着く。 誉がじっと俺の顔を見下ろす。 190近く身長がある誉…… 170チョイの身長の俺…… 立って話す時は、首が痛くなる。 「…蒼…何かあったのか?」 他人じゃ気付かない……俺の小さな変化も……誉は気付く。 「…大ありだよ……」 下駄箱から教室までの道のりを、今朝あったこと全てを誉に話した。 「……桐生と……」 俺の話を聴き終えた、誉の第一声はそれだった。 「…最悪だろっ?」 俺が桐生 大和を嫌い……大嫌いな理由を知る誉は、何とも言えない表情を浮かべてる。 「…けどさ、俺の事情に…母さんのことは、関係ないから……だから、結婚には賛成……でもアイツとは、連れ子同士ってだけで、今以上に近付くつもりなんかない」 「…そうか…」 それ以上、誉も何も言わない。 だから、俺も…そこで口を閉ざす。 …そうだ……今日の食事会の時に……アイツにそれを言えばいい。 仲良くなるつもりなんて、毛頭ないと……
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