第1章 必要以上は……

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休み時間、桐生を中心に女子も男子も、アイツの周りに集まる。 「…なあ、今日金曜日だしさ、皆で遊びに行かねえ?…んで、その後夜通し乱交しちゃったり?」 「えー!やだぁ!エッチするなら、大和としたい!」 ……高校生が教室でする話題かよ……類友と言うだけあって、桐生の周りは、頭のネジがぶっ飛んでる馬鹿な奴ばかりだ。 「…あー、魅力的なお誘いだけど……俺今日、大事な予定あるんだよね!遊びも乱交も、また今度誘ってよ!」 そう言った桐生が、一瞬俺の方へ視線を向けていたのを、俺は知らない。 何せ、アイツを俺の視界に入れない為に、俺は徹底している。 聴きたくない桐生達の話も……教室で…大人数で、しかも大声で話すから…自然と耳に入る。 ……大事な予定ね…… 一応……あんな奴でも、父親のことは大事なんだ…… 放課後になり、弓道部に所属している誉を見送り、帰宅しようと教室を出て、玄関に向かう途中…… 空き教室の前で…… 「…あっ…あっ…あんっ…大和ぉ……激…しいっ!」 「…美紀ちゃんっ……そんなに声出したらっ……誰かにっ……聴かれちゃうよっ…」 ……聴かれて困るくらいなら、こんな所でするなっ! 盛りのついた犬共めっ! ……腹の底からムカムカするものが込上げてくる。 ……まるで……あの時のことを……思い出したように…… 「…アッアッアッ…!大和ぉ…もうっ…!」 ──ガンッ!── 「…ひっ!」 女が絶頂を迎えるその時……思い切りドアに蹴りを入れた。 シーンとなる空き教室の中…… 俺はそのまま…足音を響かせて、玄関へ向かう。 その瞬間、少しだけスッとした胸…… …けっ……ざまあみろっ! 邪魔してやったぜ! ……って、何やってんの……俺……? アイツが、何処で、誰と、ナニしてようと…… 俺には関係ない……気にする必要もないのに…… 桐生と……誰かも分からない女が……半年前のことと……重なった…… 腸が煮えくり返るのは…… きっと……そのせい……
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